子どもが教えてくれたことがあるからこそ、今の私がいる。自分らしさを改めて探し、見つける場所「おやこ保育園・ほうかご保育園」小笠原舞さんインタビュー|後半

朝の会

おやこ保育園・ほうかご保育園を主宰する、小笠原舞さんと、小竹めぐみさん。小笠原舞さんへのインタビュー、後半をお届けします。

小笠原舞さんインタビュー前半はこちらから

左:小笠原舞さん 右:小竹めぐみさん

左:小笠原舞さん 右:小竹めぐみさん

 

いろんなかたちがあっていいじゃない

◆先ほど話ででてきた、でこぼこってなんですか。

小笠原舞

人のかたち、その人らしさを「でこぼこ(凸凹)」って私たちは言っているんですけど。これは小竹がNPO法人オトナノセナカで伝え続けていることなんです。

自分のいろんなでこぼこをそのまま、まずは知って、違いを認め合うことを大事にしています。こどもたちの個性をそのまんま伸ばすために、まず、お母さん自身がそのままでいいんだというのを感じられることをおやこ保育園でも大切にしています。お母さんって、お母さんである前にひとりの人だから。

それなのに、お母さんという役割を背負っちゃうと頑張らなきゃみたいになっちゃって。スーパーマンじゃないんだから出来ないこともあるわけなのに、全部自分でできるようにならなければいけないと考えてしまう人が多いなって。もちろん、頑張ることはいいことですが、逆にそれがプレッシャーになってしまっているなと感じています。それはお母さんたちが勝手に思っているんじゃなくて、社会がそう思わせてしまっている部分が多くあると思いますが。

お母さんも悲しいこともあるし、出来ないこともあるし、得意なこともあるし、それがその人のかたち。その人らしさ。

本来のその人らしく、”そこにいる”、”子どもの隣にいる”、ということができたほうが子どもも安心するんですよね。お母さんが私もできないことがあっていいんだと思えると、連鎖が起きて、子どもものびのびできるんです。保育士をしていて、一番身近な大人が自分らしくいることが、何よりも大事なことだなと感じます。

出来ないことを含めての「自分らしさ」

自分らしさを閉じ込めていると無理が生じてくる。その無理が原因となり、自分を攻めるとうつに、こどもを攻めると虐待に、相手を攻めると夫婦関係の崩壊につながっていく。家族という最小単位のコミュニティの空気を一番子どもは感じていきます。

子どもたちは言葉を話せたとしても、大人のようにうまく相手に伝えることはできないし、自分の感情自体を言語化するのもまだまだ難しい。その分、周りの空気を感じる力がとてもある。

パパはあれが得意だけどこれができなくて、ママはこれが得意たけど、あれはできなくてと話していたら、きっと“ぼくもこれができない、あはは(笑)”という感じになると思うんです。そうすると、「失敗」が失敗ではなくなり、出来ないことも含めての「自分らしさ」を獲得できるようになる。まずはママやパパが自分らしく生きていいんだよ、ということを伝えています。保育士に言われると安心するとよく言われるので、私たち保育士がいうことにも意味があるのかなと思っています。

お母さんがまず自分を受け入れる

◆子どもたちがのびのびできる環境のポイントはお母さん?

小笠原舞

お母さんがその人らしさ、自分自身に自信をもってもらうことが大事。証明できないので、仮説でしかないけれど、そうすれば子ども側の問題、親側の問題、親子を取り巻くいろんな問題が全部なくなるんじゃないかと思っています。

お母さん自身が自分のいろんなかたちを認められないと、どうしても子どもに投影していってしまう。私はこれが出来ないから、子どもにできるようになってほしい。親だからそう思うのも当然だとは思うのですが、それって子どもからしたら、頑張っても出来ないことかもしれないですよね。それで怒られるほど理不尽なことはないのかなと感じます。

ママが出来ないこと出来ること、いろんなことを含めてまず受け入れていることが何より子どもたちにとって”良い”環境なんですよね。それをちゃんとつくるのがおやこ保育園であり、社会に伝えていくのが私たちの会社のミッションです。もちろん、ママだけではなく、パパやその他の大人もみんな。

 

小笠原舞

子どもたちにとっていい環境を作ることがミッション

 

その人らしさを取り戻す場所

小笠原舞

おやこ保育園を通して、親が一生懸命遊び続けなくても、こども自身にこれだけ育つチカラがあるんだということを感じてもらう仕掛けがあります。これだけで肩の荷が下りたという声も。ママ同士話すことで、私の子とこの子はちがうんだと感じて、子どもをちょっと引いて見れたり、あのママはちがうんだと感じて、自分らしさを見つけていく。”ああ、いいんだ、私もこの子もこのままで”と安心できるので、もっとその人らしさが出てくる。そんな場になるように、丁寧に場づくりをしています。

おやこ保育園帰りの会の中に、とても大事な文化があります。それは、今日の感想と合わせて話す、「自分ががんばったこと」、「こどもへのありがとう」を話す時間です。

ママたちってがんばっても誰も認めてくれなかったり、当たり前と思われてしまうことってたくさんあると思うんです。だんなさんにふーんなんて言われた時にはイラッとしちゃいますよね(笑)帰りの会では、「寝坊したけどパパの分までごはんつくれた、やったー」「雨だったけど、遅刻しないで頑張ってここまで来た!」など、ママたちが頑張ってることを話して、みんなで認めあう時間をとっています。いつも拍手がわき、とても盛り上がっているんです。

そして、そのあとこどもへのありがとうの時間へ。「朝はグズグズだったけど、ここに来て、たくさん笑顔をみせてくれてありがとう」などと子どもの目を見て言う姿を見ていると、毎回泣きそうになるんです。言うママの表情も、言われたこどもの嬉しそうな顔も、どちらもとても素敵で。

プログラムを重ねるごとに、家族みたいになっていく

この時間で、お母さんのその人らしさが出てきたり、子どもをお母さんがどうみているかわかる。それを私たちと参加メンバーとが一緒に感じ合うので、プログラムを重ねるごとに家族みたいになっていく。自分の子どもだけではなく、他の子も愛おしくなるんです。

建前ではなく、心にあるいろんな気持ちを交換しあって、仲良くなっていくので、子どもを持ったあとにこんなに深い友達ができると思わなかったという人がすごく多いですね。おやこ保育園は親戚の家とか、おじいちゃん・おばあちゃんちみたいな空気が流れています。

いろんな人が集まるなかで、得意なことだけではなく、自分の弱みを出しながら、その人らしさを取り戻す場所に、今、なっています。

-そうやって、少しずつ自分自身のかたちをお母さんが知っていくんですね。

もう1回、自分自身の選択を整理して、大事なことを知っていく

◆自分自身が活動を通して、気づいたことは?

小笠原舞

今年、今まで実践するなかで感じてきたことをまとめた本を出すことになり、今まさに、これまでしてきたことをめぐちゃんと一緒に振り返っています。感覚を言語化していく中で、気づいていなかった発見がいっぱいありました。

一番大きな気づきは、そもそもわたしがよくつかう子ども視点ってなんだろう、ということでした。子どもの目線で歩き続けることでもないし、なんなんだろうって改めて考えました。そうして見えてきたのは、「手放すってこと」だね、という話になったんです。

子どもが生まれると新しいタスクができるので、今までとは違う時間の使い方をしなければいけなくなる。その中で、生活がガラリと変わります。多くの人が言う、時間がなくなるというやつです。でも、子どもは大事だし、そこでママ達は日常を見直すと思うんです。

そのなかで当然、選び取れないものもある。けれど、それに執着するのか、手放すのか、すごく大事だと思っていて。私はまだ子育てをしていませんが、まさに、保育士をして大きく変化したのは、これでした。自分の当たり前を子どもに押し付けようとしてたことに気づき、それを手放したら、子どもといる時間が生きることをとても豊かにしてくれたんです。

 

小笠原舞

子どもといる時間が生きることを豊かにしてくれた

 

おやこ保育園の中にある自分を整理するプロセス

小笠原舞

おやこ保育園も初めの講義は「時間」がテーマ。いましかない時間をどう過ごしますか、というところから始まるんです。いましかない、いまをいきるために、何を手放し、何を残すかををそれぞれが考えていく。自分と対話をして、生きることをシンプルにしていくことができるのが、子どもという人たちといる時間の最大の魅力なんじゃないかなと。

私もそうだったように、自分のこうしたい、っていう概念とか、自分はこうあるべきだ、というものを手放していくとすごくラクになる。手放すプロセスがおやこ保育園の中にエッセンスとしてあるんだなと。子ども視点って、ひとことで言うと、手放して生きてみようよ、という問いだと気付いたんです。

1回止まって、いまを見つめなおす時間

小笠原舞

一度止まる事は、小竹がオトナノセナカで「いちどとまって」という冊子を出しているくらい大切にしている事。

子どもってそもそも概念がなくていろんなものを手放された状態で生まれてきている。大人になるにつれていろんな概念や思い込みや、ねばならないが増えていく。母親になる時にもう1回子ども視点で考えてみたらどうだろう、もう1回それを手放せるよね、っていうのを発見したんです。

だから、子ども視点になろう、みたいなのは、もう1回自分の執着を手放してみる。最終的に、手放さない選択をしてもいいけど、自分を俯瞰してみるというのがすごく大事だねと。

もう1回いま止まって、いまを見つめなおす時間というのをいろんなかたちで提供していくということを会社でやっているんだなと、最近、とても明確になりました。

 

大事なことを子どもたちは教えてくれる

◆舞さん自身はどんなふうにみつめなおしてきましたか。

小笠原舞

私も子どもがそばにいる瞬間に、いろんなことに気づいてます。たとえば18歳のころ、ハンデのある子どもたちが通う園に行っていたのですが、感情ってこんなに全部出していいんだと思ったことがあります。そのときはなんかこの子たちといると私自身がとてもラクだなと思う程度だったのですが、マイナスな感情はだしてはいけないと思い込んでいたんでしょうね。生きる上で、いろんな感情って大事だなと教えてもらいました。

そのあと、保育士として1歳のクラスを受け持っていたときにも子どもたちに教わったことがありました。まだまだ上手におしゃべりできないけど、言語がなくても人ってこんなに繋がり合えるんだな、ということ。言語ってなんなんだろうと考えたり、その奥にある気持ちが重要なんだなとということに気づいたり。みんな同じ1歳でもそれぞれ全然個性が違うし、言葉なくても見るだけでも学びがこんなにあるんだなということに気づいたんです。

他にも、自分がおとなになって当たり前にトイレに行ける、食べることが出来るけど、彼らはそうじゃない。彼らと日常を共にすると生きる上で、とっても大事なことを子どもたちは教えてくれました。子どもたちの声をちゃんと社会に届けないと、と思ったのもこの時です。彼らの声は、ちゃんと聞こうとしないと聞こえないし、見えないものだから。

 

小笠原舞

子どもたちの声は、ちゃんと聞こうとしないと聞こえないし、見えないから

 

大人にはみえていない、その子の力があるかもしれない

小笠原舞

子どもたちは子どもたちらしく、いまを完璧な状態で生きている。だからこそ、大人側の当たり前にムリに引っ張り上げるのはしんどそうだなと感じることがあります。もちろん大人が考える、こうなってほしい、こうしたいは伝えてもいいけれど、子どもたちの言葉にならない言葉や、世界を同じくらい大事にしてほしいという想いがすごくありますね。

大人はよかれと思って無意識にやってるけど、もしかしたらその子が育とうとしている力を邪魔をしていることもあるかもしれない。

大人にはみえていない、その子の力があるかもしれない、という意識が、大人側にあれば、もう少し彼らのペースを理解してもらえるんじゃないかと思っています。そして、それは、子どもを信じることにつながる。

そういう関わりをみんなができるようになれば社会が変わり、子どもたちももっとのびのびできて、その結果、きっと親たちも子育てが楽しくなるんじゃないかなと思っています。

まず大人たちが、ありのままを認めてもらう

◆そうすると、大人同士もラクになりますね。

小笠原舞

相手への好意や期待があるからこそなんですが、執着と思い込みが生まれ、相手を縛ってくことってありますよね。例えば、恋人関係でも同じで。こっちむいてほしい!とかどこかいかないで!とか。私もそういう時期もありました。(笑)

でも、本当の信頼って、いろいろ押し付けることではないと思うんです。信じて見守るということが、何よりも相手の自己肯定感を大きくするし、その人自身を強くするなぁと思っています。でも、子どもを信頼するには、まずお母さん自身がありのままを認めてもらうこと、信頼してもらうことが大事なんじゃないかと感じます。してもらったことがあれば、他の人にできるはずだけど、してもらったことがなければ、やり方がわからない。

私自身も自分の親に愛されているか心の底では不安だったことがありましたが、ひょんなきっかけで母の涙を見て、あぁ、愛されていたんだなと感じることができた瞬間にすごく強くなりました。自分で変化がわかるほどに。

自分に自信がつくと、自分自身を見つめることができる。自信がなかったのに、あるように振舞っていた私は、自分と向き合うのがすごく怖かった。でも、もう1回自分をみつめて、私を知ることができた時に、人生が変わりました。自分を知れば、大事にしたいこと、執着していることがわかり、だから子どもに言っちゃうんだ、ということをみることができていく。これってママだからとか、ママじゃないからとか関係なく、みんな同じだと思うんです。実際に、おやこ保育園にきているママたちがお互いに本音で話し、相手を通して自分を知り、顔がパッと明るくなる瞬間を見て、同じなんだなと思いました。

ママって役割も含む私らしさ

ありのままのママたち、すなわちママになった状態のその人をもう1回認め合ったりとか、ママって役割がついた自分らしさをもう1回考えることの重要性を感じます。

いままでは「ママ」という役割はなかったわけじゃないですか。一人の人であり、女性である。さらに結婚すれば、誰かの奥さんではあったけどママではない。そこに大事な子どもという人が増えた時に、「ママ」という肩書き・役割が追加される。完璧なママを求めれば求めるほど、いろんなことを考え過ぎちゃったり、悩んだり、しんどくなったり。子どもを愛してるからだけど、でもそれがさらにしんどさになる。できない自分を責めてしまう。みんなそうやって悩んでるんだな、というのを現場で感じたからこそ、今のその人がそのまままるごと受け入れられ、仲間と共に歩みながら、見つめ合い、人に話して、自分を好きになっていくという場所ですね。

 

みんなそうやって悩んでるんだな、というのを現場で感じた

みんなそうやって悩んでるんだな、というのを現場で感じた

 

それぞれの家族の色

◆ママ・パパへ伝えたいことはなんですか。

小笠原舞

自分の特技というか、自分らしさを子育てに活かしてほしいなと思います。

もともともつその子の個性とパパとママがつくる家族の文化とが掛け合わさって、その子らしさでてくるから、自信を持って、パパとママがつくる家族の文化、その家族らしさを大事にしてほしい。

家族は夫婦がいて、子どもがいて、それがひとつのチームだから、その色がそれぞれでてくるし、兄弟姉妹がいればまたその色が掛け算される。私たちが伝えたいことの1つに「良い家族も悪い家族もない」ということがあります。自分たちだけのオリジナルの色の家族がいたからこそ、自分の命が今ここにある。もちろん悩むこともあると思いますが、喜び合い、悲しみ合い、喜怒哀楽を大事にしながら、家族らしさを楽しんでほしい。それぞれの色、100人いたら100通りの色があり、それは人も家族も同じ。名前のない色もあるだろうから、無限の色が広がる世界なんですよね、家族って。

 

◆舞さんの未来はどんな色ですか?

小笠原舞透明がいいと思っている。そのときどきにいろんな色に染まれるから。いま緑がいいなと思ったら、緑の人から吸収しつつ、みたいな。カメレオンでいたいと思っちゃいますね。欲張りですが。(笑)

小笠原舞

カメレオンでいたいと思っちゃいますね。

 

今、一番、生きることを楽しんでいる

◆今日はすごくその場を大事にしてるんだなとかんじました

小笠原舞

そうなってきたんだと思います。今、一番生きることを楽しんでいますね。今までは、わたしも執着しているものがすごくありました。まだまだあるんですが。もっと会社員だからがんばらなきゃ、保育士だからいい先生でいなきゃとかそういうのもあったけど、でもやっぱり無理だなって。ずっと完璧でいつづけるなんて機械じゃないからムリ。これでしんどくなってしまったら、子どもたちの前にいるべきではないなと思ったこともあります。自分に嘘をつきながら、子どもの隣にはいれないと。

私らしく子どもの前にいて、私が出来ないことをいうと、子どもたちも一緒に考えてくれました。そういうふうに私が子どもの前にいるからこそ、子どもたちが学んでいることもある。完璧にしないからこそ、起こることがある。そう思えたら、随分と肩の荷が下りました。

ごはんをこう食べて欲しいとか、これはこうしてほしいという私のこだわりが日々の保育の中で見えてきたのですが、執着に気づく中でそのことに向き合うと、どんどん子どもと過ごす時間がラクになっていきました。昔の私が子育てしてたら、とてつもなく、しんどかったでしょうね。自分の人生がシンプルになったことは子どもたちに心から感謝していることです。いまが一番ラクです。自分の人生を生きている感じが好き。いつでも今を大切に生きている子どもたちは、人生の先輩の1人です。

―今が一番ラクと話す舞さん、終始穏やかに話をしてくださいました。

「そうそう、そうなの!」と舞さんが語るお母さんの気持ちに共感された方も多いでしょう。私もそのひとりです。こんなにもお母さんの気持ちがわかるのは、舞さんが自分に、そして目の前のひとりひとりに、真摯に向き合い、対話をしてきたからかなと感じました。

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◆おやこ保育園

http://kodomo-mirai-tankyu.com/oyako-hoikuen

※10月開始のおやこ保育園7期は満員だそうです。

◆ほうかご保育園

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