あげる喜び、もらう喜びを体感するOSAGARI絵本ワークショップ|伊藤みずほさんに聴く(後半)

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前半は『OSAGARI絵本』ワークショップの成り立ちと、当日の様子について伺いました。

前半はこちら

本気で子どもに向き合う、本気は伝染する

−みずほさんにとっての、絵本の魅力とはなんでしょう? 

「正解がない」ということでしょうか。例えば、語学教材を編集する際には、「わかりやすさ」と「正確さ」というのがユーザの信頼につながる大切な要素の一つです。でも、絵本には、「正解」を求めないおおらかさがあるなあと。文学なんかもそうですが、絵本は特に、読者自身にゆだねられる部分が多いなと感じています。

もちろん絵本もいろいろあって、教育的なものや、道徳的な「答え」を明確に打ち出したものもあります。でも、私自身、子どものころからひねくれたところがあって(笑)「これはいいことです」と言われると、なんだか抵抗したくなる。だから、自分で絵本を選ぶときにも、「絵が好き」「言葉のリズムが好き」「なんだか笑える」という感じで、理屈ではなく感覚で決めることが多いかな。

なかでも、長新太さんという絵本作家さんが大好きで。ナンセンスの巨匠といわれる通り、子どもはゲラゲラ笑い、大人もニヤニヤしてしまうような、なんとも言葉で説明できない面白さがある。それで、何度も読んでいると、ある時ふっと、その中にある心理というか、哲学のようなものを発見することがあります。

だからOSAGARI絵本のワークショップでも、大人目線で語りたくないし、子ども自身が持っている感性に、本気で向き合いたいと思っています。その結果が、今のワークショップの形です。

このワークショップにかかわる人たち・・・「船長さん」こと講師のしみずみえさんや、デザイナーの古城里紗さん。そして、保育士の端野かなえ先生に元国語教師の瀧口舞さんと、二人の歴代船長さんたちも、みんな「本気の心」を持っているんです。

だから、打ち合わせでも、「それじゃあ、子どもは納得しないと思う」「それは大人の理由だよね」という言葉がよく出てくる。あくまでも、本気で、子ども目線であろうとしているんです。

大人の本気っていうのは子どもにも大人にも伝わる。本気は伝染すると思うから。

―だからこそ、参加されている大人も、つい本気で楽しんでしまうんですね。

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お母さんが幸せでいること、夢中で楽しめること

―『OSAGARI絵本』のワークショップで、特に好きな瞬間はありますか?

うーん、たくさんありますが・・・最後に送り出す時でしょうか。最初に入国トンネルをくぐる前は、「えー、オレ外で遊びたい!」なんて言っていた小学生のお兄ちゃんが、最後は「また遊びに来るねー!」ととびっきりの笑顔で帰っていく。また、物静かな女の子が、お友達にもらった封筒を大切そうに抱きかかえながら手を振ってくれる。そんな子どもたちのいろんな反応が、このワークショップの宝物です。

あとは、お母さんたちも楽しんでるところが好きかな。子どもと一緒に参加したお母さんたちが、気付いたら夢中になって封筒を作っている姿を見ると、なんとも嬉しくなりますよね。子どもにももちろん楽しんでほしいと思う。でも、お母さん自身が楽しめないと、それって子どもに伝染するじゃないですか。良くも悪くも、お母さんの感情に子どもは敏感。我が家の息子も、私がニコッとすると、とっても嬉しそうにニコニコっと倍返ししてくれる。そうなんだなあ、お母さんが幸せでいることって大事なんだ、って。

よく語られていることだけど、とても大事なことだと思っています。少しでもいい、OSAGARI絵本の活動が、その一助となればと思いますね。

思い出が詰まった絵本

―『OSAGARI絵本』の良さはなんですか

新品にはない「前の持ち主の思い出」という付加価値があるところです。絵本に名前が書き込まれていたり、すごく読み込んである絵本の裏表紙に「だいじなだいじな○○ちゃんへ、おばあちゃんより」と書いてあったり。「中古絵本=お古」というちょっとネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、そうじゃないところに光を当てていきたい。

子どもが自分自身で選ぶ

あとは、『OSAGARI絵本』の本棚のジャングル的なラインナップっていうのも魅力だと思います。新品を扱う絵本屋さんには人気の絵本が並んでいますが、OSAGARI絵本では、入ってきたものをどんどん置いていく。すごく古かったり新しかったり、いろんな年代のものが無作為にある。そんな、ジャングル的で整備されていない面白さがあると思うんですよね。少し前から、オフィスの一角で絵本読みや不定期販売会をしているのですが、子どもたちは「見つける」天才でして。「あ、それ見つけたか!」というのを引っ張り出してくるんです。

―お子さんが自分で選ぶというケースが多いんですね。

そうですね。お母さんとお子さんの好みが合わず、一生懸命話し合っている、なんてこともありますが。うちの息子も、正直私の好みじゃないのを「これ!」と持ってきたり(笑)。でも、まあそれでいいかなと。本人が読みたがっているので。でも、私が読みたい絵本を提案することもありますよ。だって、「はたらくくるま」ばかりじゃ、さすがに飽きちゃうもの(笑)

―子どもたちが絵本を選んでいる間、一緒に来ているお母さんは何をしているんですか。

一緒に絵本を読んだり、お母さん同士でコーヒー飲んでお話したり、いろいろですね。順番に読み聞かせしながら、「○○ちゃんのママに読んでほしい」という子どもたちのリクエストに応えることも。のんびり過ごしていますね。

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本に新しい命が吹きこまれていく瞬間

―『OSAGARI絵本』を始めて、自分自身にどう変化がありましたか。

楽しくなった! っていうのが一番かもしれない。前もそれなりに楽しんでいたはずだけど、もともと本を作る側にいた人間として、「黙々と本を集めて売る」ということに、どこか物足りなさを感じていました。でも、『OSAGARI絵本』をはじめて、改めて、本に新しく命が吹き込まれていく瞬間を見届けられるって、幸せな仕事だなあって。誰かが使い終わって片隅に置かれていた本が、うちにきて、また新しい命が吹き込まれて、誰かの手に渡っていく。これって、とても素敵なことですよね。

本を大事にしているみずほさんの気持ちが伝わってきます。

与えられている。与えることは与えられることでもある

―いま活動をされていて、大きくいうと、社会に対してどんな広がりを期待していますか。

与え、与えられる輪が広がっていくことでしょうか。

うちの会社名「株式会社ブギ」は、英語のgive(ギブ)を逆さにしたもので、「人に与えるということは、わたしたちが与えられているということである」という企業精神をあらわしています。

で、そういう思いが循環したら、すごくいいじゃないですか。ハッピーじゃないですか!

『OSAGARI絵本』で、それを体現できたらって思うんです。

いい笑顔ですね。

なんかねー、こういうこと正面切って言うと、ちょっと照れくさいのですが。でも、本気で考えたいと思っています。大人が本気で思わなかったら、子どもにも伝わらないから。本気で考えよう、と。

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地域のリアルな人のつながりを広げたい

―今後はどんな展開を考えていますか。

ゆくゆくは、小さな実店舗を出せたらいいなと思っています。

私自身、いろんな人とお話しするのが好きというのもありますが、東京で子育てしていくなかで、血縁だけで問題解決しようとするのは無理があるなと。自分自身が地方出身ということもあり、結局いつもピンチを救ってくれるのは、近所の友だちやファミサポさん、会社の仲間だったりする。子育てに息詰まっているとき、ちょっと誰かとお話しするだけで、ふっと力が抜けることもあるし。そんなふうに、地域のリアルな人のつながりを、絵本の活動を通して広げていけたら、という思いがあります。

さっきお話ししたように、いまも、オフィスの一角に試験的に小さいお店を出しています。といっても、ただの私がいる絵本棚みたいなんですけど(笑)。そこに近所のお母さんや親子に来てもらっているんですが、なかなか好評で。小さな図書館みたいな雰囲気で、読んで楽しんで帰ってもらえたらいいなと。

オフィスの一角。その日のその場の雰囲気で、動物園ができちゃった。

その日のその場の雰囲気で、動物園ができちゃった。

そうそう。小さな子どもが何かに夢中になっているときって、後姿がおまんじゅうみたいになるでしょ。あの、おまんじゅうみたいな子どもの背中がぽこぽこ並んでいたりすると、癒されるんですよね。見ているお母さんたちからも、自然にマイナスイオンみたいなのが出ているのがわかって、ああうれしいなぁって感じますね。

その様子、目に浮かびます(笑)。

あとは、ワークショップで使用する封筒と素材をキットにして販売したいなと思い、準備を進めています。地方にいて参加できないという方にも、この世界観を届けられたらと。これもね、ミステリーパックみたいにしようと思っていて。詳細はナイショです(笑)

 


名前やメッセージが書いてある本には、新しい本にない価値がある。私はこんなふうに考えたことはありませんでした。けれど、一つ一つのみずほさんの話を聞くと、その本を通した人の物語が見えてきて。モノを大事にするということは、そのモノの背景、出来てからここに届くまでを想像できるか、なのかなと、感じました。

みずほさんは自然にそれをされているんだろうなと、素敵ですね。

考えてみると、「あげる喜び・もらう喜び」も同じ。相手に喜んでもらえる贈り物は何か、相手のこれまでとこれからを想いながら、贈り物を選ぶ。受け取る側は贈り物だけが嬉しいのではなくて、選んでくれたその人の背景を想像して、気持ちも含めて、嬉しいんですよね。

『OSAGARI絵本』ワークショップも大きな贈り物。大人の本気・想いが詰まっているからこそ、喜びも詰まっています。参加者もいろいろな形で喜びを作り、味わうことができます。そしてそれはその場が終わっても心に残り、次に幸せなつながりを生んでいくのでしょう。

『OSAGARI絵本』次回の開催は11月27日(日)を予定しています。詳細は、後日こちらのフェイスブックにアップします。

OSAGARI絵本

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