お花で自分の心を自由に表現する、フラワーアレンジメントレッスン|白根由貴さんに聴く(前半)

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「きれいに活けることが目的ではない。お花を使って“自分らしく生きる”きっかけづくりをしたい」

そんな想いが込められた子ども向けのフラワーアレンジメントレッスンがあります。豊島区で白根由貴さんが営む『はるの庵』。彼女のレッスンは、これまで私が思い描いていたお花の教室とは全く違っていました。

アレンジの見本はありません。子どもたち自身がどう活けたいか、自分の心と向き合い、表現することを大切にしています。一緒に来る保護者は客観的に子どもたちを見守る。その中で子どもの新しい一面を発見したり、大人とは違う彼らの感性に触れて、“すごい!”と感じることで、子どもに対して尊敬の念を抱く。

白根さんが届けるものは「お花を活けるスキル」ではありません。お花に触れる楽しい時間を通して、「“生きる力”をはぐくむきっかけ」を届けています。

白根さんに、フラワーアレンジメント教室の様子や工夫、込められた想いをたっぷり聴きました。

はるの庵 白根由貴さん

はるの庵 白根由貴さん

 

正解のないレッスンで、はばたく子どもたち

-レッスンはどんな様子ですか?

子どもたちは、私が考える以上のものをみせてくれます。基本的にフラワーアレンジメントの見本は作りません。与えられたもので自分を表現していきます。

下は2歳から上は小学校高学年まで、月30名前後の生徒(未就学児は親子参加)がいますが、作品はほんとにひとそれぞれです。茎を使って鳥居を作る子がいたり、緑色の吸水性スポンジに穴を掘って落とし穴を作る子がいたり。小学生になってくると、日本風にしてみましたという子がいたり、今日のテーマは森のレストラン、後ろはてんとう虫が登る階段で、と説明してくれる子がいたり。まるで、工作するみたいです。

お花は女の子向きと思われがちですが、全体の6割が男の子。普段やんちゃで動き回っている子が、座って優しくお花に触れていたり、「綺麗でしょう」と作品を自慢げに見せてくれるのがかわいかったりしますね。

お花をいける様子

器を作るところからはじめる

コラボレッスンにて

お母さんたちも同じ空間で見守ります。コラボレッスンにて

見本はない。自分の心のままに活けていく。

見本はない。自分の心のままに活けていく。

 

自分を認められれば、他人も認められる

-レッスンでは何を大切にしていますか。 

自分で考えて、自由に気持ちを表現することを大切にしています。子どもたちにはお絵かきする感覚で、目の前にある花を好きなように飾ってもらっています。

同じ花材を使っているのに、出来上がりはみんな違います。でも、子ども達は他の子が作った作品を否定することがないんです。それぞれお互いの作品を認め合っています。

そのために大切にしているのが“声かけ”。例えば、花の向きが正面を向いていない時は、「まっすぐ前を向く方がいい?こっち(横向きのまま)がいい?」と本人の意思を聞きます。「こっち(横向き)がいい」といえば、多少デザイン的に整っていなくても「じゃあ、これにしよう」とそのままにします。もちろん、成長段階に合わせてデザイン的なお話はします。でも、そうやって本人の意思を尊重すると、自分が作った作品に更に自信を持てるし、他人の作品を否定しなくなります。

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「自由に気持ちを表現する」ための環境設計

-自由に気持ちを表現するって、意外と難しいように感じます。他に工夫をしていることはありますか?

集中できる環境づくりをすること、大人が口を出しすぎないことを大切にしています。

集中するためには、作業工程や時間を区切ってメリハリをつけることが大事です。子どもって大人が思っている以上に集中力が続かないので。

たとえば、花器の装飾をする工作要素と花を活ける要素を組み合わせています。花器を作ろう、お花を活けよう、と作業の区切りが生まれるので気分が変わります。

時間的にも内容的にも、“飽きさせない”という事にとっても気を使っています。

あと「お母さん以外の人(講師)と、目をみて話をする」、「指示を聞いて、自分でやろうとする」などの機会を設けています。コミュニケーションをとって、自分で考えやってみるということが大切なんですよね。

-細かく環境設計しているんですね!

強制はしない。お花を使って“心を遊ばせる”ことを大切にしたい

-気持ちを大事にするための工夫は?

気分がのらない時でも、強制せず、見守ることです。

子どもって、気分でだいぶ変わります。特に2、3歳頃に多いのですが、その子が我慢できないとか集中力がないというわけではないんです。例えば、靴がいつもと違うとか、ちょっとしたことでずっと機嫌が悪くなることありますよね。だから、お母さんには、「子どもが気分がのらないことがあるのは、当たり前」と伝えています。

作品を作ろうとしない子どもを見てお母さんは困ってしまいますが、その時は「いいんです、そういう日もあります」と伝えます。そして、そんな日は強制するのではなく「これやってみる?」など、お母さんから子どもへの声かけを頑張ってもらいます。

どんな言葉に反応するかお母さん自身が試してみる機会になればいいな、と。言葉を投げかけて反応をみる、という過程自体が、子どもの個性をより知る、いい機会になると思うんです。

それでも子どもがやりたがらないのであれば、「お母さんがやるよ」と一言伝えた上で、お母さんが作品を作ります。それを親子の作品として持ち帰っていただきます。

無理やりやらせることは、子どもにとってもお母さんにとってもいいことではないと思います。習い事として型にはめて何かを身につけさせることは目的にしていません。お花を使って“心”を遊ばせることを大切にしたいので。

お母さんの声かけがポイント

お母さんの声かけがポイント

 

お母さんが変わっていく。子どもの新しい一面との出会い

-子どもだけではなく、見守る側のお母さんたちにも発見がありそうですね。

そうなんです。はるの庵のキッズレッスンは、そこもとっても大切にしているんです。

レッスンの参加を重ねるごとに、お母さんたちの様子が変わっていくことがあります。最初は心配でお子さんにぴったりくっついていた方が、ちょっとずつ子どもと距離を取っていく。ついつい口を出してしまう事を我慢して、子どもの自主性に任せてみる、客観的に自分の子どもを見る。その中で、必要な時だけは手を貸してあげる。この線引きが難しいんですよね。

でもこんな風に“見守りの場”としての機会にもなっています。

-それは、貴重な機会ですね!子育てをしていると、子どもを客観視することって難しいですものね。

そうですね。子どもを客観的に見ることは、1人の人間として認めていく事に繋がると思うんです。だから、レッスンの時間が、お母さんの中で子どもの新しい一面を探すきっかけの場になって欲しいと思っています。

そのために、わたし自身がひとりひとりの子どもと話すことをとても大切にしています。会話や、作業工程の様子から、その子が作品の中で何を大事にしていたのかをつかむようにします。私だけに教えてくれることもけっこうあるんです。それと、お母さんと私が見ているところ、見えているところが違うこともあります。それらをレッスンの最後に、お母さんたちにお伝えするようにしています。子どものことを客観的に捉えようと、話を聴いてくださるお母さんたちの様子を見るたびに、もっとフィードバッグできるように私ももっともっと子ども達と向き合おう、という気持ちが強くなります。

-子どものためのフラワーアレンジメントレッスンですが、お母さんたちにとっても驚きや学びが多いものになっているのですね。

後半は、なぜお花を選んだのか、白根さんの想いを聴いていきます。

後半はこちら

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